木と土の調湿性ってどれくらい?

小さな木と土の家 土壁 調湿
「小木土家」内観

 

今年の夏はとても暑いですね。日本の夏は蒸し暑くてとても不快指数が高いです。そんな日本の家では、快適に過ごすために調湿がとても大事です。今回は、「小木土家」の調湿性についてまとめたいと思います。

 

 

■木の家の調湿量はどのくらい?

まずは木の調湿量についてです。少し数学的な話になります。木材の含水率は下の式で計算できます。

 

木材の含水率=木材中の水分の質量/全乾質量(木材だけの質量)×100

 

日本での木材の気乾含水率(乾燥した木の屋外での含水率)は年間でおおよそ11~17%の間で変化しています。また、冬の暖房された室内では5~7%ほどまで下がります。つまり、日本の住宅の室内に使われた木材は少なくとも10%は年間で含水率が変化していることになります。

 

この10%という数値を基に「小木土家」の調湿量を計算してみます。「小木土家」で室内に使われている木材の量は、構造材、板材、家具材を合わせると16.6m3ほどになります。これに杉材の気乾比重0.38t/m3を掛けて、

 

16.6m3×0.38t/m3=6.3t

 

となり質量が6.3tだとわかります。これは、含水率15%の時の質量なので、次に全乾質量(木材だけの質量)を求めます。

 

1.15×全乾質量=6.3t

全乾質量=5.5t

 

水分の変化量は10%なので、

 

5.5t×0.1=0.55t=550kg

 

水の比重は1.0kg/ℓなので、「小木土家」の木材の調湿量は550ℓとなり、とても多いことが分かります。

 

木の調湿機能でもう一つ大事なことがあります。それは、湿度の変化に対して平衡状態になるまでの反応時間についてです。木の反応時間は板厚に比例していて1日/mmです。つまり、30mmの板なら30日かけて平衡状態になるということです。120mm角の柱が2面室内に面していたら60日かかります。木の反応時間は遅く、厚みがあるほど長くなります。

 

無垢の厚板をたくさん使って、構造材を表しにしていることで、半年かけてゆっくりと調湿することができます。半年で550ℓなので、単純計算すると1日当たり3ℓほど吸湿または放湿していることになります。

 

また、エアコンや除加湿機を使ったアクティブな調湿と大きく違うのは、木の家のパッシブな調湿は部屋の隅や収納の中など湿気のたまりやすいところほど、木の表面積が大きくなるので効果が大きくなることです。

 

 

■土壁の調湿量は?

では次に土壁についてです。「小木土家」では荒壁と中塗り合わせて3.3m3の土壁を使っています。土壁の調湿量は約12kg/m3なので、

 

3.3m3×12=40kg

 

これで、土壁の調湿量は40ℓとわかります

実は、木と比べると土の調湿量はとても少ないんです。しかし、土壁の優れているところは湿度変化に対する反応時間で、土の反応時間の目安は0.1日/mmと、とても速いんです。つまり、10mmの厚みの土壁が一日で反応するということです。

 

夏の夕方から夜にかけて、晩御飯の準備や、お風呂に入ることで大量に出る湯気などの湿気を短時間で吸い取ってくれます。10mmの厚みの土壁の調湿量は120g/m2で、「小木土家」の土壁の表面積が115m2なので、

 

115m2×120=13800g=13.8kg

 

なので、土壁の1日の調湿量は13.8ℓとなり、木に比べてとても多くなります。

 

 

ゆっくり調湿する木と、すっと湿気を吸い取ってくれる土を合わせて使うことで、特に夏の室内の湿度を快適に保ってくれます。

 

小木土家の壁断面
小木土家の壁断面

また、もう一つ注目したいのが、土壁の透湿性です。石膏ボード下地+珪藻土仕上などの塗り壁では、吸湿性はありますが、透湿性は全くないので、吸湿した水分はまた室内に放湿されるか、吸湿したままとなってしまいます。これが珪藻土の壁にカビが生えたりする原因です。

 

土壁を下地に使うことで防湿層が必要なくなり、土壁の透湿性を生かして、吸湿した水分を室外へと放湿することができます。壁の下地を土壁にする最大のメリットはこの透湿性にあります。「小木土家」では、外壁を土壁+断熱材としていますが、断熱材を透湿性のあるものを使い、土壁の透湿性を最大限生かせるようになっています。

 

「断熱等性能等級4 技術基準」より抜粋
「断熱等性能等級4 技術基準」より抜粋

■日本の家には、木と土の組み合わせがベストマッチ

木と土の調湿性についてそれぞれの特徴を、簡単な計算を使った数学的な考察で、感覚的に捉えられるようにまとめてみました。木と土を合わせて使うことで相乗効果のある調湿性が得られることが分かっていただけたらうれしいです。また、今回は夏の吸湿について主にかきましたが、もちろん、冬には保湿効果で、風邪などの病気になりにくいとか、肌が乾燥しにくいとかいろいろ良いことがあります。木と土は日本の気候にとてもマッチした建築素材で、これからもっと生かしていけると良いですね。

 

参考文献

「断熱等性能等級4 技術基準」国土交通省

建築仕上げ材の吸放湿特性に関する研究」宮本欣明・内間文顕

水分変化による木材の寸法と形状の変化」佐道健

土壁の吸放湿特性について」福水浩史ほか